アニメを10倍楽しく見る方法教えます

評論講座アニメガタリ


アニメ評論家・藤津亮太がアニメを解説する各種講座のポータルです。問い合わせがある方は下記メールアドレスからお願いします。〓を@に変えてください。
personap〓gmail.com

アニメ評論家になるための10冊

これはインタビューズでの質問に回答したものの再録です。ちょっと古くなっているところもありますが、本質的には変わらないかな、ということでこちらにも掲載しておきます。

問:これからアニメ評論家を目指す若い人に、是非読んでもらいたい10冊があれば教えてください。

答:すごく難しいお題で、回答するのにかなり時間がかかってしまいました。

「アニメ評論家になりたい」という条件なので、
既に制作技術の基本的なところ、アニメ史の基本的なところは読んでいる、という前提です。
また、きっと本人の中にある種の専門性を背景にした思考方法もある程度あるであろう、と想定しています。
なので『作画汗まみれ』とか『TVアニメ25年史』とか大塚英志の諸作等々はあえて取り上げておりません。

その上で。
アニメ評論家という仕事を成立させるには、いくつかの手段がありますが、売文業として生きていくというのは
選択肢の中でも一つ大きな手段です。
ただし、アニメ評論は、あるんだかないんだかわからない「もや」っとした領域なので、読者に強い印象を持って読んでもらうには、単に「論文」的な文章が
書けるだけではなく、「読者の興味を引く原稿を書く」ことが求められていると、僕は考えます。

そこでまずは

1:『だからこそライターになって欲しい人のためのブックガイド』
https://www.amazon.co.jp/dp/4872332024/

 

田村章(重松清の別ペンネーム)と中森明夫、山崎浩一がライターになるためのオススメ本や必要なことなどを語った1冊。ライター志望者にすすめられる定番の一冊。

で、「読んでもらえる文章」を書くには、作家のエッセイなんかより「コラム」「レビュー」の書き方が役立つと思う。

2:『セカンド・ライン―エッセイ百連発!』(重松清)
https://www.amazon.co.jp/dp/4022576901/
重松清の実はエッセイというよりコラム集。書評もある。

3:『日本のみなさんさようなら』(リリー・フランキー)
https://www.amazon.co.jp/dp/4167660369/
リリー・フランキーが映画について自由に語るコラム。

4:『水曜日は狐の書評 ―日刊ゲンダイ匿名コラム』(狐)
https://www.amazon.co.jp/dp/4480039228/
匿名書評子・狐(山村修)の書評集。ほかにもいろいろ書評集が出ているのでそちらでも。

5:『マンガホニャララ』(ブルボン小林)
https://www.amazon.co.jp/dp/4163722602/


以上が、考えていることをいかに書くと読んでもらえるか、を学ぶ本。
ナンシー関さんなんかも、微妙なニュアンスを言葉にするのが非常に巧みだったわけで、そういう能力は画面から自分が受け取った
インプレッションをどう言葉にするかと深いつながりがあります。

次の2冊は、「自分と作品との距離を自覚して、自分がなにを考えているか、書こうとしているかもうちょっと客観的になってみよう」(長げえよ)
という本。

6:『音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 』(岡田暁生)
https://www.amazon.co.jp/dp/412102009X/

7:『ロンドンで本を読む-最高の書評による読書案内』(編・丸谷才一)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334784755/

さらにこの次はさらに視点を客観的にし、「作品を支えている下部構造は産業である」という視点を思い出すための本。
アニメは大衆芸術なので、企画そのものが産業としての必然性にひっぱられやすいのでこういう視点は忘れないほうがいい。

8:『テレビ進化論』(境真良)
https://www.amazon.co.jp/dp/4062879387/

9:『映画館と観客の文化史』(加藤幹郎)
https://www.amazon.co.jp/dp/4121018540/


で、10冊目は番外として、僕の心の師匠である映画評論家・畑中佳樹氏の著作を。

『夢のあとで映画が始まる』
https://www.amazon.co.jp/dp/4480871535/

原稿に困った時には必ずといっていいほど読み直します。

あとおまけ。

11:『不滅のスーパーロボット大全』(二見書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4576981382/

これに再録されている故・富沢雅彦氏が『ガ・キーン』について書いた「サイエンスワールドの舞姫」を読んで、自らの実力の足りなさにうちひしがれるのも一興かと。少なくとも僕は読むたびにうちひしがれます。

というところで。